ファーリーの悲哀ショートストーリー

深夜になぜか笑えたのでコピペ保存。
SimCity4をやってない人置いてけぼり。

この新興の都市ニューシティの市長に特に乞われて私ファーリーがこの町にやってきたのはもう何十年前だったか
私はこの若い都市の活力に、そして市長の情熱に社運を賭けようと決心した
苦難の連続だった。整地もされず波打った大地を必死に整地しながら段々畑のように化学薬品タンクを建てたこともあった
水道管が破裂し、発電所がパンクして断水して生産ラインが止まった事もあった
それでもシムも市長も明日を信じて皆笑顔で頑張った


何時しか時は流れニューシティは変貌を遂げた
バラック小屋が立ち並んでいた駅前は摩天楼と見間違えるような高層ビルが立ち並び郊外には大学やハイテク工場が、中心部には公園や病院が完備され、この都市は周囲からの入居者希望が殺到する
自然と技術が融合した理想的な都市に成長していた
この頃からだっただろうか私の工場に異変が起きたのは
市が新しく工場を誘致している工業団地に私は当然工場を建設した
私は黎明期から市の経済を支え続けた地元経済界の重鎮として市の商工会議所の議長にまでなっていたためたやすい事だった
しかしいざ工場の落成式に私が出向くとそこは何も無い更地だった
それだけではない、周りにあった私が手回ししておいた関連企業のグランムストン工業やスチール石油の工場までが
まるで煙のように消えていたのだ。私は現場の作業員を問い詰めたが彼は悲しげに首を振るばかりだった


私は市長になにが起こったのかを詳しく調査するように依頼した
当然市長も快諾してくれると期待したがその回答は「市長に捜査権は無い。警察署長に話してくれ」という意外なものだった
私は胸に何か不快な黒いものが去来するのを感じたがその時はそれが何であるかは分からなかった
私はもう一度自分の工場が立っていたはずだった団地を訪れた。しかしそこには目を疑う光景が待っていた
更地になった後なんの建設予定もなかったはずだったはずの団地には人間工学で有名なストラットン社やバース圧縮サービスといったいわば後年ニューシティに進出してきた余所者の会社達が名を連ねていた
私は市の財務担当に連絡を取ろうとしたが所在が不明と言う冷たい対応が帰ってきた
商工会議所の決議を利用して彼ら新参の工場に対して圧力をかけようとした
しかし会議の当日またも信じられない光景を私は目にすることになる
商工会議の私の子飼いのメンバーの席にストラットン社の役員が座っていた
彼は「これから我々も微力ながら市の発展に尽力したい」と笑った
私は途方にくれた
何かが歯車が狂って行っている事は分かっていたが有効な打開策が見出せないでいた
私は昔、必死に化学薬品タンクを建設した丘の上にある本社に戻ろうとした
しかしその丘はなんの建物も無かった
ただ丘だけが何かの冗談のように聳え立っていた


私は市の役人に怒鳴り込んだ。こんな馬鹿な話はあるか
しかし彼は官僚特有の無表情な顔に事務的な口調で口の端に僅かに笑みを浮かべ
「市の環境基準が改正されたのですよ。あなたの工場はその基準を満たしていなかったので、強制執行で工場を撤去させていただきました」とだけ言った


私は我を忘れ事前にアポも取らずに市長官邸を訪れ市長を問い正した
あの若き日の面影を微かに残す市長は面倒くさそうに顔を振って「時代は変わったのです」と私に言い放った
なおも詰め寄ろうとする私に市長はコンペティションセンターで講演があるから、と言い残しその場を立ち去った
私は守衛に外につまみ出されてしまった
帰る場所もないというのに


そして、その直後…公害産業に対する税率が20%に引き上げられたという記事が出た

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