リアブレーキケーブル内蔵フレームの方式の違いの考察

昨今当たり前となりつつあるケーブルのフレーム内蔵であるが、内蔵のためのケーブルルーティングの方法によってブレーキフィーリングに大きな違いが現れる。各社の工夫や思想が現れる部分であり、ロードバイクのフレームを評価する基準として、デザイン・重量・BB に続く第四の評価軸となることであろう。
彩湖で行われたワイズロード主催のスポーツバイクデモでいろんなロードを見てきたのでまとめてみた。
同じブランドでもフレームによって違ったりするので参考までに。

左入れ左出し

Giant TCR Advanced、Pinarello、Cyfac、KTM、Avedio、Astutoなど

トップチューブに進行方向左側からフレーム内に入り、再び左側から出てブレーキキャリパーへつながる。
従来のケーブル非内蔵フレームでアウター受けがあった位置で挿入するトラディショナルなパターン。ヨーロッパで一般的な左前ブレーキと相性が良く、外に出てる部分でのケーブルルーティングは極めて自然。しかし、インナーケーブルがフレーム内に入った直後に急な角度で曲がるため、リアブレーキの引きがゴリゴリする欠点を抱える。自分の乗ってるFocus Cayo(2009)でこのリアブレーキの引きの問題がどうにもならなかったのがこの調査を始めるきっかけとなった。理屈の上ではフレームの内側で滑らかに曲がる金属製のアウター受けがあれば解決しそうではあるのだが…
単に左から出すのはあんまりなので、最近では上方向に出したり下方向に出したりする工夫を行うことが多い。上画像のAstutoやGiantなどはもはや下入れ上出しと言っていいほど。

左入れ左出しフルアウター

MERIDA、Focus、Lapierre など

フレーム内でもアウターケーブルがずっと続いて、STIからキャリパーまで一本の長いアウターに包まれてるパターン。トップチューブが湾曲してるフレームでは必然的にこの手法を取る。
単なる左入れ左だしに比べると滑らかにリアブレーキが引けるが、フルアウターになったせいで35gほど無駄重量が増加する上にアウター長が伸びる分の抵抗が増えるのが欠点。フルアウターでないフレームをフルアウターにするのは簡単だが、逆は難しい。一方で、ケーブルが外部に露出する場所がないためトラブルは少ない。
実車を見てもフルアウターなのかどうか判断に悩むフレームも多い。メーカーの人に聞くのが一番早い。

右入れ左だし

Trek、KhodaaBloom、Dedacciai、Yonex、Giant TCR SLR など

(cyclowiredより転載、Orbea Orca OMP)
問題を根本的に解決した一つの方法がこれ。左入れ左出しを知ってる自分としては感動的なほどリアブレーキの引きが滑らか。
左前ブレーキと相性が悪いのだが、逆に言うと右前ブレーキと相性が非常に良くてリアブレーキケーブルが自然に取り回せる。日本メーカーがこぞって採用するのも頷けよう。

右前入れ左出し

SCOTT、Cannondale、Fuji、Bianchi など

(cyclowiredから転載)
挿入部分を前へずらして、ヘッドチューブの脇から入れるパターン。フレーム内蔵部分で殆ど曲がらないため抵抗は少ないが、アウターの取り回しの余裕が少ないため取り回しがシビア。特に輪行するときにハンドル90度曲げられるかという問題がつきまとう。よく考えずにハンドルを90度曲げてしまうと、ブレーキアウターが根本で折れてしまう。
左前ブレーキとの相性は、先述の右入れ左出しに比べれば改善している、、のか?

(おまけ)左下入れディスクブレーキ

Giant Defy Advanced(2015)

(cyclistの記事より転載)
ディスクロードだとどうせフルアウターにせざるを得ないので左右のどちらから入れても良いのだが、そういう場合は世界的に多い左前ブレーキを考慮して左側から入れる。



…もっといろんなメーカー来てたけど、本気でしらみつぶしに調べたわけじゃないのでとりあえずこんなところで。また試乗会とか行く機会あれば追加調査するかも。